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【決定版】帝国データバンクと東京商工リサーチの信用調査レポート、徹底比較と選び方

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現代のビジネスにおいて、取引先のリスクを評価し軽減するために、信用調査は不可欠なプロセスです。とくに企業間取引においては、事前の信用調査が取引の成否や安定性に大きく影響します。日本国内には複数の信用調査会社が存在しますが、その中でも帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)は、長年の実績と豊富な情報量で二大勢力として知られています。

本稿では、この二社の信用調査レポートについて、それぞれの歴史的背景、主な事業内容、信用調査レポートの特徴、料金体系などを詳細に比較し、最終的にどのような状況でどちらのレポートが適しているのかを考察します

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歴史的背景

帝国データバンク

帝国データバンクは、1900年(明治33年)3月3日に後藤武夫によって帝国興信社として創業されました。後藤武夫は、「善良な商人を詐欺者から守る」という強い意志のもと、当時ほとんど認知されていなかった信用調査事業を独力で開始しました。創業当初は銀行からの融資も受けられず、まさに個人の信念によって事業がスタートしたと言えます。1902年には帝国興信所に社名を変更し、1922年には株式会社に改組されました

創業から間もない1906年には、日本初の企業情報日刊紙である「帝国興信所内報」を発行し、1908年には初の企業信用録である『帝国信用録』を創刊するなど、早くから情報の発信と提供に力を入れていました。1913年には信用調査報告書の様式を統一するなど、業界の標準化にも貢献しました。その後も、1958年には評点を導入し、1968年にはコンピューターを導入するなど、時代に合わせて事業を拡大・進化させてきました

1981年には、社名を現在の帝国データバンクに変更するとともに、結婚調査や雇用調査といった個人調査から撤退し、企業信用調査に特化しました。1988年にはオンライン企業情報サービス「COSMOSNET」を開始し、1999年には電子商取引サービスを開始するなど、情報提供のデジタル化を積極的に推進しました

創業100周年を迎えた2000年には、帝国データバンクネットコミュニケーションを設立し、2007年には信用調査業の歴史と自社の社史を紹介する帝国データバンク史料館を開館しました。この史料館は、信用調査業の社会的役割や、日本の資本主義経済とともに発展してきた過程を紹介する貴重な施設となっています7

東京商工リサーチ

東京商工リサーチは、1892年(明治25年)8月に白崎敬之助によって商工社として創業されました。これは日本で最も歴史のある信用調査会社であり、日本の信用調査業界の黎明期からその役割を担ってきたと言えます。近代国家を目指す明治政府が「殖産興業政策」を推進する中で、企業の設立と取引が活発化し、手形取引や信用取引が拡大したことが、信用調査機関の必要性を高めた背景にあります

創業当初の1892年には、日本最初の企業年鑑である「日本全国商工人名録」(現在の東商信用録)を発刊し、早くから企業情報の収集と提供を行っていました。1933年(昭和8年)5月には株式会社東京商工興信所として法人化し、1974年(昭和49年)には現在の株式会社東京商工リサーチに商号を変更しました。同年にはデータベースサービスを開始し、1978年にはオンラインサービスを開始するなど、情報提供のデジタル化にも早期から取り組んでいます。1952年(昭和27年)には、日本初の信用情報誌である「興信特報」(現在のTSR情報)全国版を創刊し、企業倒産の全国集計を開始しました

この倒産集計は、現在まで日本で唯一の一貫した定義に基づいて行われており、高い信頼を得ています。1994年(平成6年)には、世界最大手の信用調査会社であるダンアンドブラッドストリート(D&B)と業務提携を結び、これにより国内与信だけでなく、世界200カ国超の企業データベースへのアクセスが可能となり、国際的な信用調査能力を大幅に強化しました。2022年には創業130周年を迎え、長きにわたり日本の経済活動を支えてきた実績と信頼を誇っています

主な事業内容

帝国データバンク

帝国データバンクは、企業信用調査を基幹事業としつつ、長年の情報収集と分析のノウハウを活かして多岐にわたる事業を展開しています。主な事業内容は以下の通りです。

  • 企業信用調査・信用リスク管理サービス: 企業間の商取引における相手先の信用状態(資産状態、営業成績、対外信用など)を中立的な視点で調査・評価し、円滑な取引を支援します。独自の「現地現認」というポリシーに基づき、プロの調査員が直接企業を訪問し、経営者から話を聞き、財務状況や資金繰りの状況などを客観的に調査します
  • データベースサービス: 長年にわたり蓄積してきた膨大な企業情報をデータベース化し、オンラインで提供するサービスです。「COSMOSNET」をはじめ、「COSMOS2」(企業概要データベース)や「COSMOS1」(企業財務データベース)など、様々なニーズに対応したデータベースを提供しています。これらのデータベースは、新規取引先の情報収集、取引先の与信判断の効率化、マーケティング活動、業界動向のリサーチなど、幅広いビジネスシーンで活用されています
  • マーケティングサービス: 企業信用調査で得た情報を基に、市場調査や業界動向調査、顧客データベースの構築・整備など、企業のマーケティング活動をサポートするサービスを提供しています
  • 電子商取引サポートサービス: 電子商取引を行う企業に対して、信用調査で培ったノウハウを活かしたサポートサービスを提供しています
  • 出版事業: 企業情報誌「帝国ニュース」や企業年鑑など、様々な出版物を発行しています1。近年では、「帝国ニュース電子版」も提供しています
  • コンサルティングサービス: 企業が抱える経営課題に対して、情報分析力や調査力を活かしたコンサルティングサービスを提供しています
  • リスク管理サービス: 倒産予測値の提供や、取引先ポートフォリオ分析など、企業の信用リスク管理を支援するサービスを提供しています
  • 海外企業信用調査: 世界各国の信用調査会社と提携し、海外企業の信用調査レポートを提供しています

東京商工リサーチ

東京商工リサーチは、「企業情報のプロフェッショナル」として、企業信用調査を中核に、幅広い事業を展開しています。主な事業内容は以下の通りです。

  • 調査事業:
    • 企業信用調査: 国内全業種の企業を対象に、取引の判断に必要な信用情報を調査し、レポートとして提供します。調査員が直接企業を取材し、財務状況や経営実態などを詳細に分析します
    • 海外企業調査: 世界200カ国超の企業情報を、提携するダンアンドブラッドストリート(D&B)を通じて提供します。D&Bレポートは、国際的な取引における与信判断のスタンダードとして広く利用されています
    • 市場調査・各種経済調査: 企業のニーズに合わせて、市場動向や業界分析などの調査サービスを提供します
    • データベース事業: 国内最大級の企業情報データベースを構築・運用し、インターネットを通じて最新の情報を提供しています。オンライン企業情報検索サービス「tsr-van2」などが代表的なサービスです
    • 情報事業: 企業情報、倒産情報、M&A情報などを取材・配信するほか、セミナーや講演会を開催し、経済トレンドや業界動向に関する情報を提供しています。とくに倒産情報の集計・分析は、長年の実績と信頼があります
    • 出版事業: 経済・ビジネス関連の雑誌や書籍を発行し、企業経営者や金融関係者など幅広い読者層に情報を提供しています

信用調査レポートの特徴

帝国データバンク

帝国データバンクの信用調査レポートは、100年以上にわたり培ってきた情報収集力と分析力に裏打ちされた、信頼性の高い情報を提供することを特徴としています

  • 調査対象: 国内のほぼ全ての企業を網羅しており、大企業から中小・零細企業まで幅広く調査対象としています
  • 情報量: 企業の基本情報(社名、所在地、代表者、設立年月日、資本金、事業内容、従業員数など)、財務情報(過去6期分の売上高、税引後利益、資本構成など)、経営状況、取引先情報、評点など、多岐にわたる情報が網羅されています
  • 分析の深さ: 定量的な財務情報だけでなく、業界における位置づけ、代表者の経営力、企業の特色、将来の展望など、定性的な情報も詳細に分析し、報告書に反映しています。とくに「現地現認」のポリシーに基づき、調査員が直接取材することで得られた、インターネットなどでは入手できない独自の情報を重視しています
  • 更新頻度: 個別企業の情報更新は原則として年1回ですが、新たな調査依頼があった場合や、重要な変更があった場合には随時更新されます
  • 評点: 業歴、資本構成、規模、損益、資金現況、代表者、企業活力の7項目を総合的に評価し、100点満点の評点を付与します。この評点は、企業の信用力を示す指標として広く認知されており、金融機関の融資判断などにも利用されます
  • 報告書形式: 主に表と文章で構成されており、色は黒・グレーのモノクロです40。各項目について、調査員の定性的なコメントが記載されているため、より具体的な状況を把握できます

東京商工リサーチ

東京商工リサーチの信用調査レポート「TSR REPORT」は、業界最大級の情報量と、見やすさを追求したカラー表示が特徴です

  • 調査対象: 国内の上場企業をはじめ、約112万社の企業情報を収録しています。中小・零細企業の調査実績も豊富であるとの評価があります
  • 情報量: 企業の基本情報、登記情報、役員構成、株主情報、事業目的、扱品、取引先、資金状況、業績(過去3期~6期、最新など)、財務諸表、財務分析、企業診断(評点)、リスクスコア、代表者経歴、業績予想、特色など、200を超える項目を収録しており、情報量は業界最大級と言えます
  • 分析の深さ: 定量的な財務データに加え、調査会社独自の基準に基づいた評点や、文章による総評などが記載されます。また、企業の経営状態を診断するベンチマークツールによるローカルベンチマークの報告も付属しており、定量データによる企業判断資料として重用されています
  • 更新頻度: 個別企業の情報更新は原則として年1回ですが、毎月データが更新されます。また、毎年「TSR企業情報調査票」を各企業に送付し、最新情報の反映に努めています
  • 評点: 「経営者能力」「成長性」「安定性」「公開性・総合世評」の4つの視点から総合的に評価し、100点満点の評点を付与します。過去の評点を最大7世代前まで遡って確認できるため、企業の体質変化を視覚的に捉えることができます
  • 報告書形式: フルカラーで編集されており、大項目が青字で表示されたり、図表やグラフが多用されたりするなど、視覚的に分かりやすいデザインとなっています。とくに、注目すべき情報やアラート部分は色分けされており、信用調査報告書を読み慣れていない人でも内容を把握しやすい工夫がされています

帝国データバンクと東京商工リサーチの信用調査レポートの比較

特徴 帝国データバンク 東京商工リサーチ
強み 深い定性分析、詳細なコメント、「現地現認」による信頼性、豊富な国内企業情報、長い財務データ期間 見やすいカラー表示、豊富な情報量(200項目以上)、グローバルデータ(D&B提携)、ローカルベンチマーク、迅速な納期
調査対象 国内ほぼ全企業 国内約112万社、中小・零細企業にも強み
情報量 多岐にわたる情報、過去6期分の財務データ 業界最大級、200項目以上の詳細な情報、過去3期~6期分の業績データ
分析の深さ 定量的・定性的な情報を詳細に分析、調査員のコメントを重視 定量的データに加え、独自の評点、文章による総評、ローカルベンチマーク
更新頻度 原則年1回、新規調査時などに随時更新 原則年1回、毎月データ更新、「TSR企業情報調査票」による積極的な情報収集
評点 100点満点、7つの評価項目 100点満点(評点)、リスクスコア(倒産確率)、過去7世代の評点推移
報告書形式 モノクロ(黒・グレー)、表と文章が中心 フルカラー、図表・グラフを多用
海外企業調査 提携会社を通じて提供 D&Bと提携し、豊富な海外企業情報を提供
料金体系 会員制、調査問合票(チケット制) 会員制、TSRポイント制、月額制のtsr-van2
納期 標準納期はやや長め 標準納期はやや短め
既調査収録状況 中~大規模企業に強み 中小・零細企業に強み
レポート見やすさ シンプル 視覚的に分かりやすい

 

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調査対象

帝国データバンクは国内のほぼ全ての企業を調査対象としていますが、東京商工リサーチは国内約112万社をカバーしており、とくに中小・零細企業の調査に強みがあるとの声もあります

情報量

どちらの会社も豊富な情報量を提供していますが、帝国データバンクは過去6期分の財務データを提供するのに対し、東京商工リサーチは過去3期~6期分の業績データを収録しています24。ただし、東京商工リサーチの「TSR REPORT」は200を超える評価項目を収録しており、情報量としては業界最大級と言えます

分析の深さ

帝国データバンクは、長年の経験に基づいた深い定性分析と、調査員が直接取材することで得られる独自の情報を重視しています。一方、東京商工リサーチは、定量的なデータ分析に加え、独自の評点や文章による総評、さらに企業の経営状態を診断するローカルベンチマークなどを提供しており、多角的な視点からの分析が可能です

更新頻度

どちらの会社も原則として年1回の情報更新を行っていますが、新たな調査依頼があった場合や重要な変更があった場合には随時更新されます。東京商工リサーチは、毎年「TSR企業情報調査票」を企業に送付するなど、積極的に情報収集と更新に努めています

評点

両社ともに100点満点の評点を採用していますが、評価項目や算出方法には違いがあります。帝国データバンクは業歴、資本構成、規模、損益、資金現況、代表者、企業活力の7項目を評価するのに対し、東京商工リサーチは経営者能力、成長性、安定性、公開性・総合世評の4つの視点から評価します。また、東京商工リサーチはリスクスコア(倒産確率)を提供し、過去の評点推移を最大7世代前まで確認できる点も特徴です

報告書形式

帝国データバンクの報告書は主にモノクロで、表と文章が中心のシンプルな構成です。一方、東京商工リサーチの「TSR REPORT」はフルカラーで、図表やグラフを多用しており、視覚的に分かりやすいデザインとなっています。

海外企業調査

帝国データバンクは、世界各国の信用調査会社と提携して海外企業信用調査レポートを提供しています1。東京商工リサーチは、世界最大手の信用調査会社であるダンアンドブラッドストリート(D&B)と業務提携しており、「D&Bレポート」を通じて豊富な海外企業情報を提供しています

料金体系

帝国データバンクは会員制で、「調査問合票」というチケット制を採用しています。一方、東京商工リサーチも会員制で、「TSRポイント」制を導入しています。また、東京商工リサーチは月額制のオンラインサービス「tsr-van2」も提供しており、より柔軟な利用が可能です。料金体系は複雑なため、利用頻度や目的に合わせて最適なプランを選択する必要があります。一般的に、レポート1件あたりの料金は両社ほぼ同程度であるとの情報もあります

納期

一般的に、東京商工リサーチの方が納期がやや早いと言われています。公称では、東京商工リサーチの方が通常で4営業日、最短で2営業日短いとされていますが、担当営業マンの力量によって変動する可能性もあります

既調査収録状況

業界関係者の話では、中小・零細企業のヒット率は東京商工リサーチの方が高いと言われています。営業ターゲットが中小企業向けのサービスや商品の場合は、東京商工リサーチの方が適している可能性があります。一方、帝国データバンクは中~大規模企業の情報に強みを持つとも言われています

レポート見やすさ

東京商工リサーチの「TSR REPORT」はフルカラーで、図表やグラフを多用しているため、視覚的に分かりやすいと評判です。一方、帝国データバンクの報告書はモノクロでシンプルな構成であるため、見やすさの好みは分かれるかもしれません

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料金体系と入手方法

帝国データバンク

帝国データバンクの信用調査レポートを入手するには、原則として会員契約が必要です

  • 会員制度: 調査会員に申し込むと、「調査問合票」が発行されます。この調査問合票1枚で、国内外の企業信用調査を1社依頼できます
  • 料金: 調査問合票の料金は、購入枚数によって単価が異なります。例えば、5枚セットで120,000円(1枚あたり24,000円)、9枚セットで200,000円(1枚あたり22,222円)など、まとめて購入するほど割安になります。調査問合票の有効期間は、申し込みの月またはその翌月から1年間です
  • 追加費用: 新規調査の場合、調査問合票の他に、調査員の交通費、商業登記簿閲覧料、不動産登記簿閲覧料などの実費が別途かかる場合があります。また、速達などのオプションサービスを利用する場合は、追加料金が発生します
  • 入手方法: 電話、FAX、またはオンラインサービス「COSMOSNET」から申し込むことができます。報告書は郵送、FAX、またはCOSMOSNETを通じてPDFファイルで受け取ることができます
  • コピーサービス: 過去に調査済みのレポートがある場合は、コピーサービスを利用することで、より迅速かつ安価に入手できる可能性があります。調査日から2ヶ月以内のレポートは1.0枚、2ヶ月経過したレポートは0.5枚の調査問合票で入手可能です

東京商工リサーチ

東京商工リサーチの信用調査レポートを入手するには、主に以下の方法があります。

  • TSRポイント会員: 前払い制のポイントシステムで、加盟料金に応じてポイントが付与され、そのポイントをレポートの購入に利用できます。加盟料金は10段階に分かれており、上位のレンジほど1件あたりのレポート費用がお得になります。1ポイントは100円相当で、レポート費用と付帯料金に利用できます
  • tsr-van2: 月額3,000円から利用できるインターネット企業情報サービスで、会員価格でレポートを注文したり、既存のレポートを即時ダウンロードしたりできます。TSRポイント会員とtsr-van2を併用することで、さらに便利にサービスを利用できます
  • スポット購入: 会員にならずに、個別にレポートを注文することも可能です。新規調査のレポート費用は通常50,000円、調査日から2ヶ月以内のコピーは50,000円、2ヶ月経過したコピーは40,000円です
  • 付帯料金: 新規調査の場合、レポート費用に加えて、交通費、登記調査料などの実費である「付帯料金」が発生します。登記調査料は、調査地域外の法務局ごとに5,000円が加算されます
  • 入手方法: オンラインサービス「tsr-van2」から注文できるほか、お問い合わせフォーム、電話、FAXなどでも注文できます。レポートはオンラインでダウンロードできるほか、郵送やFAXでの受け取りも可能です。郵送の場合は、別途配送処理料がかかります

 

第三者による比較や評価

複数の第三者機関やWebサイトが、帝国データバンクと東京商工リサーチの信用調査レポートを比較・評価しています。

  • 市場シェア: 信用調査の国内シェアは、帝国データバンクが約60%、東京商工リサーチが約20%とされています。このシェアの差は、とくにグループ企業間で与信情報を共有したり、取引企業同士で評点の物差しを共通にしたりする際に、帝国データバンクの方が運用しやすいという意見があります
  • 料金・納期: 料金体系は両社類似しており、レポート1件あたりの金額もほぼ同じです。納期に関しては、一般的に東京商工リサーチの方がやや早いとされています
  • 調査項目・分析: 調査項目は両社ともほぼ網羅されており、与信管理上の支障はないと考えられます。分析の深さやレポートの形式には違いがあり、帝国データバンクは詳細な定性コメントを重視する一方、東京商工リサーチは視覚的に分かりやすいカラー表示や図表を多用する傾向があります
  • 中小企業カバー率: 業界関係者の間では、中小・零細企業の調査実績は東京商工リサーチの方が豊富であるという見方があります
  • グローバル対応: 東京商工リサーチはD&Bとの提携により、海外企業の調査に強みを持っています。帝国データバンクも海外企業調査に対応していますが、提携会社を通じての提供となります
  • 社員評価: 企業の口コミサイトなどでは、両社の社員による評価も公開されており、企業文化や待遇などを比較する参考になります。総合評価では東京商工リサーチがやや高い傾向が見られる一方、残業時間や有給休暇消化率など、項目によって評価が分かれるようです
  • 横断検索サービス: G-Searchなどのデータベースサービスを利用すると、帝国データバンクと東京商工リサーチの企業情報を一度に検索できるため、効率的に情報を収集できます。

信用調査レポートを利用する際の注意点と適した状況

信用調査レポートを利用する際には、いくつかの注意点があります。

  • 情報の鮮度: レポートの情報は一定の期間を経て作成されたものであり、常に最新の状況を反映しているとは限りません。とくに、企業の状況は常に変化するため、レポートの作成日を確認し、必要に応じて追加の調査を行うことが重要です
  • 客観性と限界: 信用調査レポートは、調査会社の客観的な視点に基づいて作成されますが、完全に客観的であるとは限りません。また、企業が公開していない情報や、調査時点で把握できなかった情報も存在するため、レポートの内容が全てを網羅しているわけではないことを理解しておく必要があります
  • 利用目的の明確化: 信用調査レポートを利用する目的を明確にし、目的に合った情報が記載されているかを確認することが重要です。例えば、新規取引先の選定であれば、支払い能力や財務状況を重点的に確認する必要があります
  • 多角的な評価: 信用調査レポートの結果だけでなく、他の情報源(インターネット上の情報、業界の評判、取引先の声など)も合わせて総合的に判断することが重要です。信用調査レポートはあくまで判断材料の一つとして活用すべきです
  • 秘密保持: 信用調査レポートには機密性の高い情報が含まれているため、社内での利用に限定し、第三者への漏洩は厳禁です
  • 調査依頼のタイミング: 取引先の決算日から1~2ヶ月後に調査を依頼すると、最新の決算書を入手できる可能性が高まります
  • 調査内容の明確な伝達: 調査会社に依頼する際には、知りたい情報を具体的に伝えることが重要です

どちらのレポートがどのような状況に適しているかについては、以下の点が考慮されます。

  • 深い定性分析を重視する場合: 帝国データバンクの、調査員のコメントや「現地現認」に基づいた詳細な定性分析は、企業の表面的な情報だけでなく、内面的な状況や経営者の考え方などを把握するのに役立ちます。とくに、取引金額が大きい場合や、長期的な取引を検討している場合には、より深い理解が求められるため、帝国データバンクのレポートが適している可能性があります
  • 視覚的に分かりやすいレポートを求める場合: 東京商工リサーチの「TSR REPORT」は、フルカラーで図表やグラフが多用されており、直感的に情報を把握しやすいのが特徴です。多くの情報を短時間で把握したい場合や、報告書を社内で共有する際に分かりやすさを重視する場合には、東京商工リサーチのレポートが適しているかもしれません
  • 海外企業との取引が多い場合: 東京商工リサーチはD&Bと提携しており、世界200カ国超の企業情報を提供できるため、海外企業との取引における与信判断には大きな強みを発揮します
  • 中小・零細企業との取引が多い場合: 一部の情報源によると、東京商工リサーチは中小・零細企業の調査実績が豊富であるため、これらの企業との取引における信用調査に適している可能性があります
  • 迅速なレポート入手を希望する場合: 一般的に、東京商工リサーチの方が納期がやや早いとされているため、急ぎでレポートを入手したい場合には、東京商工リサーチを検討する価値があります
  • グループ企業全体で与信管理体制を構築する場合: 国内シェアの高い帝国データバンクの評点を基準とすることで、グループ全体で統一的な与信管理体制を構築しやすいという意見があります

結論:優劣の考察と歴史的背景

帝国データバンクと東京商工リサーチは、どちらも日本の信用調査業界を長年にわたり牽引してきた実績と信頼のある企業です。創業から100年以上の歴史を持ち、日本経済の発展とともに信用調査の重要性を高めてきました

帝国データバンクは、創業者の「善良な商人を詐欺者から守る」という理念を受け継ぎ、徹底した「現地現認」主義に基づいた、深く掘り下げた定性分析を強みとしています。長い歴史の中で培われた豊富な企業情報と、詳細な調査員のコメントは、取引先の信用状況を多角的に理解する上で非常に valuableです。

一方、東京商工リサーチは、日本初の企業年鑑発行という歴史を持ち、D&Bとの戦略的な提携によってグローバルな情報ネットワークを構築しています。見やすいカラー表示のレポートや、リスクスコア、ローカルベンチマークといった先進的な分析機能は、現代のビジネスニーズに対応した情報提供を可能にしています。とくに、グローバルなサプライチェーンや販売網を持つ企業にとっては、東京商工リサーチの国際的な情報力は大きなメリットとなります。

どちらの信用調査レポートが優れているかは、一概には言えません。それぞれの企業が持つ歴史的背景と強みを理解し、自社のビジネスの特性や取引の状況、そして重視するポイントに合わせて選択することが最も重要です。深い定性分析や国内市場の詳細な情報を求めるならば帝国データバンク、グローバルな視点や視覚的に分かりやすい情報を求めるならば東京商工リサーチが、より適した選択肢となるでしょう。

また、中小企業との取引が多い場合は東京商工リサーチ、グループ全体での与信管理の標準化を目指す場合は帝国データバンクといったように、具体的な状況に応じて使い分けることも有効な戦略と言えます。最終的には、両社の提供する情報やサービスを比較検討し、自社のニーズに最も合致するパートナーを選ぶことが、リスクを低減し、ビジネスを成功に導くための鍵となります。

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